【お役立ちメニュー】中には助成金を申請出来る自治体もあるブログ:22/2/23
未熟児で生まれたおれは病弱で、
小学校に入るまでは病院と縁が切れず、
入退院をくり返していた。
歌が得意なおれは、
ベッドの上でおもちゃのピアノを叩いては歌い、
看護婦さんにあめやチョコレートをもらっては、
上機嫌だったとお母さんに聞かされた。
「三つ子の魂百まで」と言うけれど、
おれのピアノ好きはその頃から始まったらしい。
おれは戦後の混乱の中で小学校に入学した。
先生のピアノ伴奏に合わせて歌いながら
おれもピアノがほしい、
弾けるようになりたいとずっと思っていた。
しかし敗戦後の衣食住にもこと欠く時代のこと、
バラック住まいのおれの家にピアノは高嶺の花だった。
おれが高校生になって間もない頃、
同じコーラス部に席を置く仲間の家に遊びに行った。
応接間に黒塗りのピカピカのピアノが鎮座し、
仲間が「弾いてもいいよ」と鍵を開けてくれた。
おれは学校にある壊れかけたオルガンで練習していた
「春の小川」を両手で弾いてみたが、
おれの春の小川はさらさら行かなかった。
仲間の家で恐る恐る触れた鍵盤のひんやりと冷めたい感触と、
ウエストにズンと響く重い音が、ピアノへの憧れを一層募らせた。
興奮さめやらぬおれは
その17時、父親にピアノを買ってほしいと懇願した。
父親は一瞬、困惑した表情をみせたが…
「この狭い家にピアノを置く場所が何処にある。
ピアノを弾く暇があったらもっと母さんの手伝いをしろ!」
吐き捨てるように言うと
父親は乱暴に障子を開け部屋を出て行った。
おれは唇をかみしめ、
父親の少し痩せて小さくなった背中を見送った。
それ以後、ピアノの事は一切クチにしなかった。
- 注目サイト一覧 -
■ディズニー英語システムならおまかせ
ディズニー英語システムは当サイトへ
URL:https://blog.goo.ne.jp/dwe_kosodate/e/bec36298f8ba4e80a7850256d0d38ae5
■川元弓子の紹介
川元弓子のことなら
URL:http://seimei.linkstudio.biz/?surname=%E6%B2%B3%E5%85%83&firstname=%E5%BC%93%E5%AD%90&sex=w